住宅に関わるシロアリの種類|暮らす環境と分布の違い

住宅と木材を描いた、シロアリの種類・暮らす環境・分布を紹介するイラスト シロアリ
説明用の生成イラスト。実際の住宅被害や生息場所を示すものではありません

ヤマトシロアリ、イエシロアリ、アメリカカンザイシロアリ。

名前は似ていても、暮らす場所や木材との関わり方は同じではありません。

ヤマトとイエには地中や地際の枯れ木などで暮らす共通点があり、アメリカカンザイは乾いた木質部材の内部で生活します。森林総研の解説、乾材シロアリの総説

種類の違いをつかむには、「どこで暮らすか」「どんな材を加害するか」「国内のどの地域について情報があるか」を分けて見ると整理しやすくなります。住宅との関わりを中心にこの3種を比べ、地域の説明ではダイコクシロアリにも触れます。

住宅に関わるシロアリを、暮らす場所から比べる

まず、生活する環境の違いを見てみましょう。

種類生活する場所・環境
ヤマトシロアリ湿った木材や土中で生活する
イエシロアリ地中性で、湿気のある環境を好む
アメリカカンザイシロアリ乾燥した木質部材などの内部で生活する乾材シロアリ

出典:東京文化財研究所「ヤマトシロアリ」、国立環境研究所「イエシロアリ」、吉村(2011)の総説、京都大学の研究概要。表は一般的な生活環境を整理したもので、目の前の虫を判定する表ではありません。

「湿気のある場所で暮らす」と「湿った木材だけを加害する」は、別の話です。ここを一緒にしてしまうと、イエシロアリと乾材シロアリの違いが分かりにくくなります。

巣の作り方と、加害する木材はどう違う?

ヤマトとイエは、巣の作り方にも違いがある

ヤマトシロアリは、加害している場所を巣として使います。東京文化財研究所の解説では、加工した巣をつくらず、加害箇所が巣になるとされています。一方、イエシロアリは固定巣をつくることが、森林総研の研究者による総説で説明されています。東京文化財研究所、大村(2015)

どちらも地中や地際の枯れ木などに営巣する生活があるものの、巣の作り方まで同じというわけではないのです。これは一般的な生態の説明で、住宅のどこに巣があるかを決めるものではありません。森林総研(2016)

イエシロアリは乾いた材も加害する

ヤマトシロアリについては、湿った木材への加害が専門機関の解説に記載されています。イエシロアリは湿気のある環境を好みますが、乾いた材も加害対象に含まれます。生活する環境と、加害できる材を分けて考えたい理由はここにあります。日本木材総合情報センター、国立環境研究所

アメリカカンザイシロアリは、乾燥した木質部材の内部で生活する点が特徴です。住宅の木材との関わりを理解するときも、「乾いた材を加害できる」という点と「その内部で生活する」という点を分けて見ると、イエシロアリとの違いがつかめます。吉村(2011)、京都大学

ただし、「乾材」という名前を水分が不要という意味にしたり、材の見た目が乾いていることを住宅の安全の保証にしたりはできません。

種類によって異なる分布と、確認されている地域

ヤマトシロアリは北海道の一部を含む国内の広い範囲、イエシロアリは南関東以西の本州太平洋岸や四国・九州などが、資料で説明される地域の目安です。アメリカカンザイシロアリも国内各地で確認されていますが、地域名が挙がることと、その地域全体に分布することは分けて見る必要があります。以下では、広い地域の概要と個別の確認報告を分けて紹介します。

ヤマトシロアリ:国内の広い範囲。北海道にも確認例

森林総研の2016年の概要では、ヤマトシロアリは北海道の一部を含む国内の広い範囲に生息すると説明されています。これは過去の野外生息・被害情報を整理した資料で、現在の分布境界を確定する地図ではありません。森林総研(2016)

個別の報告としては、2022年10月、帯広市の民家敷地内にあった廃材やイチイの切株でヤマトシロアリが確認されています。2023年発行の論文による報告で、J-STAGEでの公開は2024年です。この例から帯広や十勝の全域への定着、建物の被害まで分かるわけではありません。青山(2023)の著者抄録

イエシロアリ:本州の太平洋岸や南の地域が概要に挙がる

国立環境研究所の解説は、国内移入分布として、本州の太平洋岸地域の南関東〜中国地方、四国、九州、琉球列島、伊豆諸島、小笠原諸島の父島を挙げています。ヤマトシロアリの広域概要と比べると、太平洋岸や南の地域を中心とした説明になっています。国立環境研究所「イエシロアリ」

このページの更新年は確認できていません。また、同所は分布図について、色が付いた地域全体に分布するとは限らないとしています。地域名や県境だけで、自宅にいる種類を決めることはできません。

アメリカカンザイシロアリ:各地の確認と、地域内の広がりは別

鹿児島県の2025年3月改訂「外来種リスト」は、アメリカカンザイシロアリについて、国内の広い範囲で確認されてきたと説明しています。リストでは「カンザイシロアリ」と表記され、学名は Incisitermes minor です。これは確認の広がりを紹介する概要で、2025年に全国を一斉調査した結果ではありません。鹿児島県外来種リスト・誌面37頁

地域を絞った調査では、関西・北陸9県の防除会社を対象とした2004年の論文に、兵庫・大阪・和歌山・富山・福井からの被害報告があります。これは回答した会社から寄せられた報告で、その県の全域に分布するという意味ではありません。2004年の被害調査・著者抄録

ダイコクシロアリ:地域を添えて知っておきたい乾材シロアリ

住宅に関わる種類として、ダイコクシロアリも乾材シロアリに含まれます。2022年の論文の背景説明では、奄美大島以南と小笠原諸島が国内の被害地域として挙げられています。ただし、この説明は2001年などの文献に基づくもので、2022年の新しい全国調査ではありません。板倉ほか(2022)・誌面17頁

建物との関わりは、小笠原の母島を対象とした1984〜1986年の調査でも報告されています。こちらも当時の建築物への加害報告です。地域外にはいないと広げず、資料の年代と対象地域を添えて知っておきたい種類です。佐藤ほか(1987)の著者抄録

種類を知ると、同じ「木材に関わるシロアリ」でも、生活する場所や巣、加害する材を分けて考えられるようになります。一方、自宅の状況は名前や分布の知識だけでは決まりません。

羽アリを見つけて調べているなら、見分け方・出やすい時期・まず確認することへ。建物の変化が気になる場合はシロアリ被害のサイン、普段の維持管理を知りたい場合はシロアリ予防で、目的に合う情報を確認できます。

出典確認日:2026年10月31日。各資料の発行年・調査対象は本文の該当箇所に記載しています。

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