「シロアリ対策は済んでいます」と説明されたとき、次に知りたいのは、いつ、どの場所に何をしたのか。そして、今の状態をどこまで確かめたのかです。
木造の中古戸建てを購入する前は、過去の記録と、今回の調査結果を分けて見ることから始めましょう。「被害があった」「防除した」「補修した」「今の状態を調べた」は、それぞれ確認したい内容が違います。
内覧で見えたこと、売主側に残る資料、調査で分かったことを照らし合わせれば、購入の判断に向けて、まだ誰に何を尋ねる必要があるかを整理できます。
内覧では、気になる場所を質問の手がかりにする
内覧中に気になる変化があったら、まずはその場所と、どのように見えたかを残します。撮影できるかを確かめたうえで写真を撮り、場所や日時を添えておくと、後で説明を求めるときに使えます。
確認は、内覧で安全に見える範囲まで。自分で床下や小屋裏に入る、部材を外す、木部や土状の筋を壊す、薬剤を使うといった作業は避け、見えない場所は調査の相談へつなげます。
反対に、内覧で何も気にならなかった場合も、見えなかった部分の状態まで分かったわけではありません。見た目だけで被害の有無を決めず、記録や調査の範囲を確かめてください。調査の限界については国交省のQ&Aも参照できます。
気になる変化の見方や、安全に確認できる範囲は、次の記事で詳しく整理しています。
過去の記録は、被害・防除・補修を分けて読む
売主や仲介には、過去の点検報告、防除の施工記録、補修の記録などが残っているかを尋ねます。住宅履歴には、住み始めてからの点検・修繕・リフォームの記録や報告書も含まれます。住宅履歴情報についての公式Q&A
読むときは、次のように情報を分けると、説明のつながらない部分を見つけやすくなります。
| 記録の種類 | 書面や説明で確かめたいこと |
|---|---|
| 調査・被害の記録 | いつ、どこを調べ、どの場所にどんな指摘があったか。見られなかった場所はあるか。 |
| 防除の記録 | いつ、どの範囲に、どのような処理をしたか。どこが実施したか。 |
| 補修の記録 | いつ、どの場所を、どのように補修したか。過去の指摘箇所とどう対応しているか。 |
これは確認するための項目です。書面に見当たらない内容は、売主や仲介に説明を求めます。すべての住宅に同じ記録が残っているとは限りません。
「防除済み」という説明だけなら、傷んだ部分への対応まで含むのかは別に尋ねます。補修の記録がある場合も、その内容と、後にどこまで状態を確かめたかを分けて聞いておきましょう。現在の状態や補修の十分性まで書面だけで決めつけず、調査担当や関係する施工担当から説明を受けます。
保証書があれば、購入後の扱いを発行元へ
保証書を受け取れる場合は、対象となる建物や範囲、期間、対象者を確認します。保証がいつから始まるかも、施工日から推測せず、書面の記載を見ます。所有者が変わった後も対象になるか、必要な手続きがあるかは、書面の記載を見て、不明なら発行元や関係する担当者へ尋ねてください。保証が自動的に引き継がれるとも、売買で必ず失効するとも決めつけず、対象物件の条件を確かめます。
「調査済み」は、日付と調べた範囲まで確かめる
過去の調査結果と現在の状態には、時間の経過で違いが生じる可能性があります。報告書を受け取ったら、いつの結果なのかを最初に見ます。国交省Q&AのQ1-13では、調査結果と現況の関係が説明されています。
そのうえで、調べた部位、調査方法、確認できなかった場所を読みます。方法や範囲が読み取れなければ、担当者の説明で補います。
建物状況調査にも、木造住宅の蟻害を調べる項目がある
国の方法基準に基づく「建物状況調査」は、所定の講習を修了した建築士が行う調査です。木造住宅では、対象となる部位について、著しい蟻害があるかを目視などで調べる項目があります。「建物状況調査ではシロアリは一切対象外」と考えるのも正確ではありません。
ただし、調べられる範囲には限りがあります。通常移動できる位置からの調査が基本で、家具に隠れた部分や、点検口がなく見られない部分などには制限があります。調査を受けたことが、隠れた部分も含めた無被害の保証になるわけではありません。
また、「住宅診断」「ホームインスペクション」などの名称で提供されるサービスは、内容が同じとは限りません。別にシロアリ調査を依頼する場合も、名前だけで判断せず、今回の依頼に何が含まれ、どこまで調べられるのかを確認します。
「対象外」「調査できない」「指摘なし」を同じにしない
報告書では、似て見える言葉の違いにも目を向けます。
- 対象外:方法基準では、その部位が住宅に存在しない場合の扱い。
- 調査できない:部位はあっても、物理的に確認できなかったもの。
- 指摘なし:調べた範囲と時点での結果として読みます。未調査の場所まで確認済みとはしません。
個別の書面の名称や記号も見て、希望していた場所がどの扱いなのか分からない場合は、調査担当へ理由を尋ねます。未調査の部分は、「異常がなかった場所」として読み替えないことが大切です。
分からないことに合わせて、説明や追加調査を相談する
不明点が残ったら、何が分からないかに合わせて、説明を求める相手を選びます。
| 残っている疑問 | 次に相談する内容 |
|---|---|
| 記録が見当たらない、過去の工事内容が分からない | 売主・仲介に、資料の所在や当時の対応を説明できる担当者を尋ねる。 |
| 報告書の範囲や結果の意味が分からない | 仲介に、調査担当から詳しい説明を受けたいと伝える。 |
| 確認したかった場所が調べられていない | 追加で確認できるか、方法・費用・結果の受け取り方を調査担当等と相談する。 |
この表は、順番に全部進める手順ではありません。資料がそろっていなくても、そのことを含めて不明点を伝えられます。追加調査を一律に重ねるのではなく、まず、今ある説明で分かることと、まだ確かめたいことを分けましょう。
買主が建物状況調査を依頼する場合は、あらかじめ売主の承諾が必要です。希望する調査の内容を仲介に伝え、実施できる範囲や条件を調整します。料金も内容や実施者によって異なるため、依頼前に確認してください。国交省Q&AのQ1-8・Q1-10・Q5-6
防除を相談する事業者を選ぶ段階では、点検・説明・施工・保証で確認したいことも参考にしてください。
購入後は、受け取った記録を次の維持管理へ
購入後は、受け取った報告書や工事の記録を保管し、以後の点検・補修の記録を加えていきます。日常の環境や施工後の確認については、次の記事で整理しています。
購入前に残る疑問が、資料の所在なのか、調査の範囲なのか、過去の指摘への対応なのか。その一点を具体的にして担当者へ伝えることが、次の確認を選ぶ手がかりになります。
参考資料
- 国土交通省 インスペクション(既存住宅の点検・調査)「宅建業法で『建物状況調査』と呼んでいるインスペクション」の説明
- 国土交通省「既存住宅状況調査方法基準の解説」(2024年10月25日)第4・5条
- 国土交通省「宅地建物取引業法における建物状況調査に関するQ&A」(2024年4月1日現在)Q1-1・8・10・13・14、Q5-6・8・9
- 住宅履歴情報蓄積・活用推進協議会「いえかるて Q&A」
資料確認日:2026年11月5日。個別物件の状態や契約条件は、その物件の資料と担当者の説明で確認してください。




